寒いから、温もりが感じられる
今日はかなり久しぶりに映画を借りた。
有人レジが廃止され、レジが自動で清算を済ませるマシーンになっているのだが、どうにも慣れない。
バーコードを自分で機械に通すのだが、毎回カードを通す前にバーコードをかざして上手くいかず、あたふたしている。
10秒程のバーコードとの苦闘が終わって、気が付いてカードを通したとき、店員さんが声をかけてきた。
月に1000円程度支払うと旧作の映画が借り放題になるとういうシステムがあるらしく、それを丁寧に説明してくれた。
それがすごく理想的に聞こえた。
ぼくはどうにも、この手の販売戦略に弱いらしい。最近気が付いた。
今考えると、自分の映画鑑賞の習慣からして、赤字となるのは確実である。
しかし、それに気が付くのには随分と時間がかかるわけで、そのうえに初月無料なんて言われるものだから、その場ですぐ注文するつもりになっていた。
ところが、その店員さんの口から「クレジットカード」という言葉が出てきた。
ちょっとまってくれ、ぼく、高校生ですよ。
この前、牛丼のチェーン店でビールの割引券を貰ったときのそれと同じ感覚だった。
クレジットカードを持っていないのでと丁寧に断り、マシーンとの無言の格闘が終わった後、自転車を跨いだときに気が付いた。
ぼくは大学生と間違えられるようなことがよくある。
その容姿で今日着ている服が、地味な茶色のジャンパーなのだ。
寒くて前のファスナーもしっかりとめているものだから、ジジくさい事この上ない。
たしかに、クレジットカードが似合う男に見えなくもない気はした。
思えば、よく友人からお前はジジくさいと言われる。
内面、外見ともにそうなのだそうだ。
いつも「そんなことないわ!君たちにはぼくのセンスがわからんのだよ!」なんて言い返してはいるが、そういわれても仕方がないのはわかっている。
自分がちょっと変な奴なのだということはわかっている。
でも、笑いのネタにはするが、最近は別に気にしたりはしていない。
これでも中学の頃よりはましになっているのだ。
それなりに身だしなみやら何やらと、いろいろと気は使っているのだ。
逆に、「これが洒落ている」と着る服まで横並びになるのはどうかと思う。
流行りというシステムがぼくにはよくわからない。
「今年はこういうのが流行ってるからね~」
んー、誰がそれを決めるんだよー。
流行っているからといって、それに合わせてどうなるのだろう。
みんな一緒の服って変じゃないか。
しかし、よく考えるとわからなくもない。
学校に行くと、周りと一人だけ違うという状況は避けてしまうし、どうしても横並び意識は働く。
それと同じものなのだろうと考えると、なんとなくわかるような気もした。
地味なジャンパーに吹き込んでくる風が刺してくるのに耐えながら自転車をこぎつつ、そんなことを考えていた。
信号を待っているときに、目の前を向かい風に突き進む自転車が通っていった。
お母さんと後ろに載せられた小さな息子くん。
お母さんが「ひゃ~~さむい~~!ひゃ~~!」なんて全力な顔で、それに明るい笑顔で悲鳴をあげるなか、後ろの小さな坊ちゃんはモコモコの暖かそうな格好で「おれ、じぇんじぇんしゃむくないし~♪」なんて言っている姿がなんとも微笑ましかった。
小さな子供とお母さんの、あの唯一無二のふたりだけの時間は不思議な時間だと思う。