盆栽と人
盆栽というものの面白さは、それ自体はただの木であるところにあります。
山野草や蘭も園芸の一分野として古くからあるものだと思いますが、それらは希少性や独特の模様など、その植物の種類に価値が置かれます。
そのうえでいかに健康に美しく育て、その種の魅力を表現できるかが栽培者の腕前です。
それに対して盆栽は、例えば庭に紅葉が芽生えているのを偶然に見つけて、それを鉢に上げて仕立てればいつの間にか数十万の値が付くような盆栽になります。
それがただの鉢植えになるか一流の盆栽になるかは手入れする人間の腕前次第なのです。
盆栽に限らず、植物は思い通りになりません。
貴重だからと高級な鉢に最良の土に仕立てて、一番日当たりのいいところに置いたものほど調子を崩したり枯れてしまったり、逆に、これなら枯れてもいいかと寄せ植えにして雑草まみれで放置した鉢で、目を見張るような成長をとげている木もあります。
誰が雑草まみれで荒れ放題の鉢で調子のよくなる木があると思うでしょうか。
雑草に囲まれることで、冬は霜から守られ、夏は過度な乾燥を防ぐのです。
どれだけ期待しても折れるものは折れます。どれだけ見捨てられても伸びるものは伸びます。
どこに成功があるかはわかりませんし、どこに失敗が潜んでいるかはわかりません。
何気ない日常のどこにヒントがあるかもわかりません。
この盆栽の事例は人間に通じるところがあると思います。